今から数十年前――あるパニック映画が公開された。
ベストセラー小説を原作に、後に映画界の頂点にまで上り詰めることとなる若き天才監督の手腕により、圧倒的恐怖の象徴として完成したその映画は、世界中の観客を震撼させ、今日まで『伝説の映画』として語り継がれることとなった。
しかし同時にこの映画による弊害もまた存在した――物語に登場する敵役が『全人類の仇敵』として誤った形で認知され、映画が公開されて以降、彼女らは世界中の人間から長きにわたり迫害されることとなったのである。
20XX年。
歴史的な逆流の中、彼女らは安住の地を求め日本のとある小さな港町にたどり着いた。
その町は、九州の宮崎県 綿津見郡にある町、『綿津見町』<わたつみちょう>という。
海の幸が豊かな綿津見灘、山の幸が豊かなヒルタマ山系を有し、そして――
――『七つの海と七つの海伝説』が伝わる町、それが綿津見町だった。
その綿津見町最大の商店街、『ミツタマ通り』を中心に物語は泳ぎ出す――