【いろんなサメ】エンジェル・シャーク

この記事では、いろんな種類のサメを紹介していきます。
今回紹介するのは――

――『エンジェル・シャーク』

『海中に舞い降りた天使』

天使の名を冠するサメ。どんな姿かというと……

引用:YouTube

……う~ん、天使

ちなみに和名はカスザメ(糟鮫)と言います。
名前の格差を感じますね。
それでは早速解説していこうと思います。

1.カスザメの基本データ

カスザメの仲間は23種います。
そのうちの2種の基本データを下記に載せました。

名称カスザメカリフォルニアカスザメ
目名カスザメ目カスザメ目
科名カスザメ科カスザメ科
属名カスザメ属カスザメ属
種名カスザメカリフォルニアカスザメ
学名Squatina japonicaSquatina californica
命名者Bleeker, 1858Ayres, 1859
英名Japanese angelsharkPacific angelshark
分布北海道南部~台湾までの太平洋、日本海、シナ海アラスカ南部~バハカリフォルニア
生息域水深320m以浅の大陸棚上の砂泥底水深200m以浅の浅海の砂泥底
大きさ幼魚:約30センチ最大2m幼魚:25~26センチ最長1.7m
体重??????
体の特徴平べったい体
大きく広がった胸ビレと腹ビレ
平べったい体
大きく広がった胸ビレと腹ビレ
顎・歯幅広い口小さく細くて尖った歯幅広い口小さく細くて尖った歯
食べ物魚類、甲殻類、タコなど魚類、甲殻類、タコなど
生殖方法胎生(卵黄依存型)胎生(卵黄依存型)
人間に対する危険度

刺激を与えると反撃される恐れあり

カスザメの最大の特徴は、その平べったい体です。
高速で泳ぐというより海底で隠れてじっとしているのに適した体をしています。
夜行性で底生、待ち伏せ型のサメです。

人間を狙って攻撃するサメではありませんが、砂の中に隠れている場合があります。
不用意に接近しすぎたり、知らずに踏みつけると攻撃され、鋭い歯で噛まれる場合があります。

2.なんでエンジェルシャーク?

この見た目でなぜエンジェル・シャークと呼ぶのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
どの辺が天使属性なのか――それはヒレと泳ぎ方にあります。

引用:YouTube

胸ビレと腹ビレを翼のように広げ美しく泳いでいます。
その優雅な泳ぎ方が天使が空を舞う姿を彷彿させたのでしょう。

またカスザメの腹側にも天使属性があります。

引用:YouTube

下側は真っ白です。
もし遊泳中のカスザメを下から見ることができたなら、まさに天使が泳いでいるように見えるかもしれませんね。

ではカスザメの和名の由来は何でしょうか?
漢字で書くと糟鮫。
名前の由来は諸説あるようで、食用として価値が低いからとか、サメなのかエイなのかどっちつかずだからとか、はっきりしていません。

3.狩りは『待ち伏せ戦法』

カスザメの獲物を捕らえる方法は、”待ち伏せ”です。

砂の中に隠れて忍者のように体をカモフラージュし、眼と頭だけ出して獲物が来るのを待ち構えます。
隠れる時間はあっという間です。ヒレを巧みに動かして砂に埋まり、数秒で海底の一部に溶け込みます。
体の模様も砂に似た迷彩色となっていて、自分をカモフラージュするのに一役買っています。

そして獲物が通りかかると大きな口を開け、瞬時に海水ごと獲物を吸い込み捕まえます。

引用:YouTube

4.昔は重宝された鮫皮

カスザメのサメ皮は頑丈で、密生していて大きさも揃っていることから、鮫皮製品として昔から利用されてきました。

まろやかワサビおろしに

お寿司を食べるときワサビは欠かせません。
私たちが食べるワサビといえば大抵チューブわさびをイメージしますが、本当のワサビは生ワサビをおろし金ですったものを指します。
これでも味はチューブのものとは大分違うのでしょうが――

――実は最上級のワサビの下ろし方があるのです。

それは鮫皮を使ったワサビおろし

普通のおろし器とは比べ物にならないそう!
鮫皮のおろし金でおろすとワサビの細胞が細かく破壊され、クリーミーでまろやか、そしてツンと辛味の来る極上のワサビになるそうです。
カスザメのサメ皮を使ったおろし金は通販でも販売されています。

浮世絵になくてはならないサメ皮

日本を代表するアート、浮世絵
実は浮世にはカスザメのサメ皮が欠かせません。

浮世絵の色付けには、馬の毛の刷毛が使われます。
しかし馬の毛は硬く、そのままの状態では染料のノリが悪いのです。
そこで乾燥させたカスザメのサメ皮に刷毛をこすりつけます。すると毛先が割れてふんわりと柔らかくなり、染料のノリが良くなるのです。

まとめ

カスザメの解説は以上です。
いかがでしたでしょうか。

このサメをエンジェル・シャークと名付けた最初の人はどんな思いでこの名前をつけたのか……。
想像が膨らみますね。
そして浮世絵にはなくてはならない存在でしたから、カスザメがいなかったら数々の浮世絵の名作は生まれてこなかったのかもしれません。
あと極上のワサビで寿司も食べてみたい……。

次回もまたユニークなサメを紹介したいと思います。

参考文献

■参考書籍

『世界の美しいサメ図鑑』 仲谷一宏/監修 宝島社 2015
『世界サメ図鑑』 スティーブ・パーカー/著 仲谷一宏/日本語版監修 ネコ・パブリッシング 2010
『さめ先生が教える サメのひみつ10』 仲谷一宏/著 ブックマン 2016
『ほぼ命がけサメ図鑑』 沼口麻子/著 講談社 2018
『サメー海の王者たちー 改訂版』 仲谷一宏/著 ブックマン社 2016
『はじめてのサメ図鑑』 月刊アクアライフ編集部/編 田中 彰/監修 エムピージェー 2020

■参考WEB

『海遊館 ブログ「海遊館日記」 名前の付き方はそれぞれ』https://www.kaiyukan.com/connect/blog/2017/05/post-1285.html

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